スマートな目標に欠かせないこと〜目標設定

『みんな、数字を追う虚しさに気づき始めている』

上手いな。

そう思うキャッチコピーを見つけたのは、書店の本棚でした。

平積みされた新刊本に巻かれた帯の言葉は、本自体のテーマを分かりやすく解説しつつ、

この本の内容に関心がありそうな来店客の目線をとらえる(キャチする)という目的にも効果的な、秀逸なコピーでした。

春、4月だなあ。

まだ桜が開花しない北海道で、ふと、そんな事が思い浮かぶのは、日常の会話で飛び交う、こんな言葉が増えたからだと思います。

「今期の目標の振り返りは?」

「上期の進捗は?下期の目標設定は?」

「現状を振り返ってみて。次の目標はどう考える?」

たとえば会議のシーンなどで、この『目標』というトピックになると、起こりがちな現象が『沈黙』です。

「この目標でどう?いけそう?」

(シーン……)

「なんか、聞いておきたいことや分からないことは無い?」

(シーン……)

「とりあえず、この目標で行きましょう。いいよね?」

(シーン……)

もちろん、それが全てではありません。時には怒声や反論が矢のように飛び交う会議もあります。

それが、ビジネスの現場に置いて、この『目標設定』というテーマが持つ一面です。

ただし沈黙であれ、怒声であれ、後々、起こりがちなのが「そもそも、なんで目標がこの数字なの?」「どんな根拠があって、こんな目標が」といった、再燃焼のヒソヒソ話。

かくいう私も、身に覚えがあります。

「なぜ、いつもいつも、前期+10%の目標なんだ?」「誰が、どんな根拠で考えたんだ?」と会社員だった時に思ったことに。

当時、私は我慢できず『質問』という聞き方で上司に『目標の理由』について、説明を求めました。

目標が決まった経緯は細かく説明を聞くことができましたが、理由の方は要約すると「会社として必要だから」の一言のみ、という内容でした。

(たったそれだけ……という点にガックリしたのも、よく覚えています)

その後、たまたま自主参加したセミナーでこんな話を聞く機会がありました。

「合理的な目標設定には原理原則、セオリーがあります」と。

えっ!ホントに!?

文字通り、食らいつくように目と耳を集中させ、習い覚えたのが、いわゆる「SMARTの法則」でした。

SMARTの法則

「目標設定は、スマートに。これがセオリーです」

講師の先生が語るスマートな説明のおかげで、たった一回のセミナーから『生涯、忘れられない記憶』になるほどの衝撃を受けました。

(これを知っていたら、上司ともう少し建設的な話ができたかもなあ……)

自分の中にそんな思い出があるためか、つい最近までは『目標設定』や『目標設定』で悩む人に会うたび、このスマートな法則のお話をしたり、

怒声が飛び交いがちな営業会議に同席する時は「少しでもスマートな話し合いになってもらえれば」と、

自前のスライドを見せながら少々、ミニレクチャーをさせて頂くようになっていました。

(せっかく集まって話し合うのだから、建設的な話し合いになってくれるといいなぁ)

と心の中で願っていましたが、実際の反応は予想や期待とは大きく違っていました。

「SMARTの法則」を話して、前向きな反応を示した人は、だいたい1%ほど。ほとんどの人は「???」という反応でした。

なぜだろう?いたってシンプルな内容なんだけどなあ??

私自身も「?」が浮かんでいると、ある社員の方が、そっと本音を漏らしてくれました。

「突然、英語の話をされても、分からないですよ……」

英語の話!そうか、そう伝わっちゃっていたのか‼️

「今やGoogle検索でも、サッと出てくる法則。『聞いたことあります』という人も多いだろう」

シンプルな内容が全く伝わらない、響かない要因は、私が勝手に考えていた、こんな『思い込み』が原因だったのです。

スマートにしたかった貴重な話し合いの機会を、逆に停滞させていたのかもしれません。

聞く側がより聞きやすいように。実感しやすいようにしないと。

そう考えなかった自分を省みて、以後は伝え方を変え、説明する資料も一から作り直しました。

吉田版SMARTの法則

「要は、『目標について、どれだけ、ぶっちゃけ話ができるか?』が大事なんです!」

目標設定の会議に同席するたび、ほぼその一言が私の口癖になりました。

「ぶっちゃけ、ぶっちゃけ」と繰り返す私の説明は、スマートからは全く程遠い伝え方です。

ただし、最近は少しずつ変化が生まれつつある。そう感じてもいます。

沈黙や怒声の変わりに、ワイワイガヤガヤと会議の参加者が話し始めるシーンが増え始めたからです。

「要は、客単価が下がったら販売数は上げないと、ってなるでしょ」

「でもプライスを上げたら、今度は実際に購入するか?って話だよね?」

「あまり安い価格にしたら、利益はどうなるの?数を目標通り売っても、残る利益がギリギリじゃなあ」

「これまでのプライスとの整合性は?そこも確認しないで、大丈夫?」

こんな会話が飛び交い始めると、私は近くで「そこ、大事ですね!」「全く、その通り!」と繰り返し言っているだけの人になりますが、

それでも1時間や2時間は、あっという間に過ぎていきます。

会議室の温度も、体感ですが、プラス1度か2度、上がってきた気がしています。(たぶん、気温の上昇だけが原因ではないはずです)

不思議なことに、こんな会話が増えていくと、最初は単なる数字に過ぎなかった売上や利益という『目標』に、血が通い始めます。

「全く理解できない」「何を話せば良いか、分からない」というサインだった『沈黙』も減り、

「できそう?」「というか、やんなきゃダメでしょ」と声が徐々に増え始めます。

ただし、目標が気持ちよく一発で決まった!ということは、まだありません。いつもいつも、手間も時間も掛かる、話し合いの繰り返しです。

でも、それが良いんじゃないかな。

最近は、そう思っています。

スマートな目標設定には、スマートじゃない手間を掛けることが欠かせない。

私に「SMARTの法則」を教えてくれた、あの先生も、きっとそれを分かっていたんじゃないかな。最近、いろんな会議にお邪魔した後、そんなことを考えています。

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